埼玉県のエスカレーター条例についてのエレベーター屋の見解

お役立ち情報

みなさんは普段、エスカレーターに乗る時ってどうしていますか?

多くの方は、どちらか片側を空けて乗っているか、急いでいるときは、歩いて登っている方がほとんどだと思います。

そんなエスカレーターですが、2021年3月26日に埼玉県で全国初となるエスカレーターの条例が出来た事をご存知でしょうか?

なんかニュースで見たかも!?なんていう方は多いかも知れません。

今回は、エレベーターのメンテナンス業者として、このニュースの見解をまとめています。

埼玉県で可決された条例の内容について

埼玉県のエスカレーター条例についてのエレベーター屋の見解【ペンギントークVer】
2021/3/26 に埼玉県で全国初となるエスカレーターの条例が成立しました。今回は、このニュースの見解について、1 さいたま県で可決された条例の内容について2 エスカレーターの片側空けのルーツ3 メーカーの見解は?4 技術的な側面は?5 エスカレーターを安全に利用するには?の内容でお話をしています。■動画付き解...

2021年3月26日に、埼玉県で全国初となる「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が成立しました。

内容は、エスカレーターの利用者に立ち止まって乗ることを義務付けるというもので、さらにエスカレーターの管理者にはその周知を義務付けたうえで、県は周知が不十分な管理者に指導や助言、勧告ができると定められています。
大雑把にいうと、エスカレーターで歩いたらダメですよという条例なのですが、エスカレーターの事故って実は多くて、2018年から2年間で約800件くらい事故が発生しているようです。

こういう事故が多く発生している事実も条例が出来た背景にはあります。

ただ現状として、片側空けて乗るという暗黙のルールのようなものがあるので、急いでいる人は歩いて上がってしまうのも無理は無いと思います。

エスカレーターの片側空けのルーツは?

調べてみると、エスカレーターの片側空けの始まりはロンドンの地下鉄という説が書かれていました。
1944年にはロンドンの地下鉄で「右側に立て」というポスターが貼られていたということがあったようです。

日本でもエスカレーターの左右どちらかを歩く人向け、もう一方を立ち止まる人向けとする慣習は、高度経済成長期からバブル期にかけて浸透したもののようです。関東では左側に立って右側を空けて、関西は逆で右側に立って左側を空けるというローカルルールのようなものがあります。

メーカーの見解は?

条例が出来た背景や、片側空けのルーツを知ってもらったところで、製造メーカーはどういった使用を想定して作られているのか?を調べるために、大手某エスカレーターの取扱説明書を見てみると、

”利用者が転倒し、死亡・けがの恐れがありますので、エスカレーター・トラベーターご利用の際は歩いたり、走ったりしないで下さい。

・他の利用者と接触し、利用者が点灯し、死亡・けがの原因となります。

・ステップやパレットに衝撃を加えると安全装置が作動して、エスカレーター・トラベーターが停止することにより、利用者が転倒し、死亡・けがの原因となります。”

ときっちり明記されていました。

製造メーカーとしても、立ち止まって利用する事を想定して作られており、ステップを歩いて使用するということは、危険なので運行管理者より利用者に対して注意を促すように説明して下さい。
と説明書にきちんと記載してある事が分かりました。

技術的な側面での問題は?

エスカレーターのメンテナンスをしている、立場からするとステップのどちらか片側にだけに負荷がかかるっていうのは、あまり良いとは言えません。

内部にある駆動ローラーやチェーンの片側だけに負担がかかってしまうことも考えられます。
構造的には、左右均等にローラーが回転してチェーンが駆動する仕組みになっているので、どちらかのチェーンだけ伸びたり、ローラーが摩耗したりとバランスが悪くなる可能性も考えられます。

エスカレーターを安全に利用するには?

ハンドレールを持って乗る

ちゃんとハンドレールを持っておかないと、急にエスカレーターが止まった時に、前のめりになって転倒の原因になってしまいます。

エスカレーターについている挟まれ防止などの安全装置によって、危険な場合はすぐに停止するように作られています。
急に止まってしまってもこけてしまわないように、ハンドレールは持って乗ることが、転倒防止には大切です。

立ち止まって、黄色い枠の中に乗る

エスカレーターのステップを見てもらうと、黄色い枠があるのが分かってもらえると思います。

このステップは、アルミかステンレスの鋼板を折り曲げて作られています。ステップの左右の端と前方部分に見える黄色いものはプラスチックで出来ていて、乗る位置の目安として設けられています。
構造上どうしてもステップが動き続けているので、隙間に入り込んでしまう事も考えられるので、ステップとステップの間に挟まれないように、この黄色のラインは踏まないようにして下さい。

以前に、サンダルが挟まれたというニュースで聞いたことがある方もおられると思います。お子様がサンダルでエスカレーターを利用する際は、特に気をつけて見てあげて下さい。

以上がエスカレーターの片側空けの歴史的な背景であったり、製造メーカーの見解の説明でした。

少なくとも日本においては、エスカレーターの歩行に関して推奨をされたことはなく、安全に利用するには立ち止まって乗ることが推奨されていることが分かって頂けたでしょうか?

条例にする必要があるかどうかは分かりませんが、今回埼玉県で条例が出来たことによってエスカレーターは立ち止まって乗るということが、”正しい”という認識を持って貰えるきっかけの1つになれば、良かったなと思います。


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